“災害・戦争”有事民権法(案) 2003年10月4日
前 文
20世紀は戦争の世紀であった。21世紀を迎えた今日、21世紀を後世の人々はなんと呼ぶであろうか。 阪神大震災が起こり、未曾有の被害が生じたとき、日本の政府は『自然災害に政府は責任はない。生活再建は自助努力で』と、言い放ち、被災者は切り捨てられた。 自然災害が発生したことに政府に責任がないとしても、生活者が生活基盤を破壊され、生活の運営力を失っているときこそ、国家の存在理由が問われたのである。 被災者の生活再建支援を求める市民立法運動の呼び掛けをきっかけに、超党派の議員と連携を広げ、被災者支援法を成立させたことは、民の注目されるべき動きであった。それでも、仮設住宅での孤独死で逝った人たちの無念さを思うとき、国家と我々民の関係は、依存したり、服従したりしていては、生存すら脅かされかねないことを明らかにしたのである。 国家があって、民の生活があるのではなく、国家に認められて、人権が保障されるのではない。 アメリカはブッシュ大統領のもと、アメリカこそが平和と人権の意味とあり様を決定する権限があるかのように、アフガニスタン、イラクをはじめ他国の政権を武力で転覆させ、それを解放と呼ぶように全世界に押し付けている。 156国会は、この国の首相の「どこが非戦闘地域か、戦闘地域か私が知るわけがないでしょう」という無責任発言に全世界があきれ返る中、日本の統治権力がみづから統治上の誓約として国の内外に示した『不戦』宣言(日本国憲法第9条)を踏みにじり、アメリカが戦争を仕掛け、イラクの民の意思を押さえつけて占領しているイラクへの、アメリカ侵略軍の傭兵として自衛隊を派遣する法律を成立させた。 今、私たち民は、こうした時の政権の意向に縛り付けられ、左右されることを拒否する権利を有していることを、ときの権力者に思い知らせなければならない。 国家がいかなる政策を決め、いかなる行動を民に求めようと、民には、それに巻き込まれることなく、服従する義務のない民の権利が存在することを我々民が宣言するときがきた。 イラクに駐留しているアメリカ軍兵士は、政権からの帰還延期命令に従う義務はないことを宣言するときがきた。イラク民から、『イラクのことはイラク人が決める!アメリカはイラクから出ていけ!』の声に連帯を表明しよう。 平和と安全、そして人権と、聞こえのいいスローガンを権力が掲げたとき、その内容や具体化については多様な価値観や方法があることを否定される。権力がひいた戦争への道を歩むことが「平和のため」とされ、「生活の安全」のためには自由と多様な価値観を犠牲にすることが求められる。 21世紀に生き、子供や孫たちにこの地球を引き継ぐ我々は、ここに、民の『戦争,有事を起こさないための民権安全法』案を提起する。 民の『戦争,有事を起こさないための民権安全法』案は、国家権力を支配し、統治している勢力にたいする民の抵抗権の宣言であると同時に、21世紀を再び戦争の世紀にしない民の雄叫びとなろう。
第 1 章 第1条 民権の定義 1 民とは、地球上に於いて生を得、それを終えるまで、その人種、民族、国籍、地域、性別、年齢、門地、思想、信条、宗教、職業、収入、など、あらゆる条件によって区分されない生を営んでいる、全ての生活者であり、民権の主体である。 2 民権とは、地球上のどの地域であろうと、どのような国家に属していようとにかかわらず、全ての民に帰属する権利である。 3 民権は、人が人として存在するうえで、人としての尊厳をもち続けるための制度を構築し、国家にたいしその実現を要求することができる権利であり、国家が課してはならない義務を拒否する権利である。 4 民権は、どのような権力によっても、どのような手続によっても、奪い、縮小させることはできない権利である。
第2条 国家の責務 1 地球上のいかなる国家も、その政治体制のいかんにかかわらず、民権を奪い、縮小させることはできない。 2 地球上のいかなる国家も、いかなる名目によっても、民衆にたいし、戦争に参加することを強要し、協力させることはできない。 3 地球上のいかなる国家も、民の生活基盤を支える責務を負い、それが毀損されたときは、生活基盤の回復を実現しなければならない。
第3条 有事民権宣言 1 民は、内心の自由をもつ。自由な意見交換の中で多様な価値観を受け入れる自由とともに、一定の価値観を強制されることはない。 2 民は、民権を侵害する法律や政策に対しては、服従する義務はなく、抵抗する権利をもつ。 3 民は、平和に生きる権利をもつ。誰の命令であるかを問わず、武器をとって戦うこと、協力することを強要されない。 4 民は、互いに連帯し、民権に従う国家を作る権利を有する。 5 国家、その他人為的なあらゆる権力は、民の、人としての尊厳を侵すことはできない。
第 2 章 第4条 平和的生存権 1 「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」と宣言した日本国憲法前文に示された平和的生存権は、すべての民の権利であり、その確保はすべての民の責務である。 2 民は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」(日本国憲法前文)権利および責務を持つ。 3 政府は、日本国を戦争・有事に導くいかなる行為を行ってはならず、戦争・有事に導くいかなる法令も民に対し効力を有さない。
第5条 思想・信条および良心の自由 1 すべての民に帰属する思想・信条および良心の自由は、日本を取り巻くいかなる国際環境においても、仮に極限の紛争状態にあっても、国家に優越する。 2 すべての民は、政府により戦争・有事のため軍事的役務、名称のいかんを問わず訓練への参加強制等いかなる役務の提供や、軍事の遂行ために、もしくはそれに付随した目的のために、民の所有、使用している施設、設備、物品等財産の供出に関する命令等に対しては、自己の良心により一切を拒否する権利を有する。 3 すべての民は、日本が政府の行為により戦争・有事となった際には、自己の生命・身体・財産・生活の安全のために、白旗を掲げる権利を有する。 4 政府は、良心的兵役・役務提供拒否権、民の白旗権を行使した民に対し、いかなる不利益扱いも行うことは出来ない。
第6条 非交戦国宣言 1 日本国は、いかなる理由によっても交戦権を持たないことを宣言する。 2 国際紛争を解決するために、政府は国際社会に対し、非軍事的貢献に徹する責務を有する。
第7条 戦争・有事に関する情報操作の禁止 1 政府は、戦争・有事に関するいかなる情報も、民に対し、秘匿し、加工してはならず、あらゆる操作を行ってはならない。 2 第1項の行為がなされたときは、その地位、目的、手段にかかわらず、民の平和的生存権を侵害する行為として処罰対象となる。
第8条 民の生活基盤破壊に対する国の責務 1 政府の行為による戦争の惨禍により、もしくは種類のいかんを問わず自然災害により、民の生活基盤が破壊されたときは、その自助努力の土台となる生活基盤回復を実現するために支援する責務を有する。 2 政府は、戦争・有事および自然災害など、生活基盤破壊が予想される事態に対し、生活基盤回復を実現するに足りる支援制度を整備する責務を有する。 |