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あけましておめでとうございます。 つつがなく本年も賀詞を言上させて頂けますこと、皆様がたのお蔭と感謝致します。本年もよろしくお願い申し上げます。
一昨年、昨年と巡りくる年ごとに、「歴史」の渦がはげしくなりつつあることを実感しています。文化、芸術、言論のことごとくは、今後は表現者の名前と日付が世の中から、以前にも増して注視されることとなるでしょう。
本を出しました。手応えがありました。 小田実氏との出合いが最高にして最大の果実であり、「自主講座シリーズ」を今後つづけて開催していく運びとなりました。小田実氏は「現代は文学の時代だ」とおっしゃっています。サロンのひとつの原型であった、文字のサロンがようやく誕生しようとしているのです、
昨年度の過半を拙著「マリア・ユージナがいた」(リブロ社刊)のために捧げました。今年も出す予定があります。催事は、私にとり切実なもののみを自主企画として採り上げてまいります。お楽しみ下さい。
■メンバーズ・イベント
先生が人をあつめてお話をされるのは、お宅から近いこの場所だけになりました。ご高齢の先生を慕って。毎回お集まりになる方が増えています。 2ヶ月に一度の会。もはや「源氏物語」の筋からは解き放たれ、舌鋒は完璧無類に自由であり。紫式部を語ることが自らを語ることに、そのままなっていきます。時事への鋭い風刺がかわらず閃き。ものごとの本質を抉っていく創造力に衰えはみられません。 九十歳に迫ろうとされる先生のご容貌は。日に日に底からかがやき、美しく見えます。若さとは、何なのでしょうか。
「七十七翁」と色紙に添えられ印を押されます。独自のスタイルをもつ書を何枚か頂いています。つかまえようと思うと、すぐさまどこかヘ抜けていくような、不思議に大らかな書体。淡斎先生もまた、大きな子供なのです。 この講座では、そのときどきの山野の花をめいめいに活けて遊びます。それぞれの花の角度や背丈により、花はふたたび白然のいのちを得たかにみえます。はかなさの、一瞬の強さ。堂々とみずからの形と色を誇る力づよさ。くりかえし活けつづけることで、人間が花になります。
おどりは最も素直な人間の心の表現です。幼児はうれしいときに手をたたき、もっとうれしければ足踏みをにぎやかに鳴らします。ことばだけでは伝えられないとき、私たちは身振りで小さなときから心を表現してきました。 社交ダンスには、いちおう決められたステップが定められています。しかし、正しいか正しくないかは、ダンスパーティの現場においては全然問題ではありません。相手の方とリズムが合いさえすればダンスは楽しいのです。 だから、和やかさだけがここにはあります。これをご覧になって、よし、と思われた方は一度ぜひお越し下さい。初心者の方には、岩永先生がやさしく根気よく教えて下さいますから。
以上の講座がおとなりのNHK学園との共催で開かれました。
■山村サロン・コンサート
自主企画の音楽会 ――J.S.バッハと三宅榛名さんのコンサートが芯です。――を含めて、「音楽会から」という項目をご覧下さい。 (なお、山村サロンでは「持ち込み企画」は、ご遠慮させて頂きます。縁もゆかりもない方の演奏会を主催することは、無責任になるからです。ただし従来どおり、貸し会場としては、門を広く開けてお待ちしております。)
■音楽会から
林峰男氏は3度目の来演。サロンの音の響き具合を非常に好まれ、ソロでの出演依頼の電話をかけさせて頂いたら、その場で決まりました。桐朋で斎藤秀雄氏に師事された後、デュッセルドルフに留学。1975年ベオグラード国際チェロ・コンクールで第1位。現在はスイス・ローザンヌに本拠を置きつつ、毎年の「サイトウ・キネン・オーケストラ」公演にも参加されています。 プログラム・ノートに次のように書きました。「林峰男さんは大きな音楽をつくる人だ。情熱にあふれ、しかも繊細なニュアンスの変化が音符にいのちを与えつつ、造形は巨木のようにゆるがない」 ――その通りになりました。一瞬に賭けるはげしさ、こころよい興奮にからだがえる。すばらしい夜になりました。 「来年もやりましょう」とその場で決めたのは、いうまでもありません。お楽しみに。
今年もヴィンシャーマン氏はやって来られました。彼の率いるドイツ・パッハ・ゾリステンの日本公演の日程の合間をぬって、一夜をサロンのために空けて下さいました。 お話にふれるたびに、ほんとうの教養人だな、と感服します。音楽について、広く芸術について、人々の生活の歴史や人間の真情について。もっとも、これが普通なのだと思うのですが、だからこそヨーロッパの音楽は底が深いのです。「マタイ」を語ってもマニア的な狭さが微塵もなく、ごく普通に地上で息をしながら光ることばを、あたかも歌のように紡ぎたされました。 アルカディア協会の諸氏によるソプラノ・アリアなどの実演と、CDやLPから。なかでも若き日のヴィンシャーマン氏のソロ・オーボエは美しさのかぎりでした。ミュンヒンガー指揮の「復活祭オラトリオ」。
4度目の来演。はじめてお越しになった年季の入られたシャンソン・ファンの方が、「こんな方がいられたのね」と賛嘆されました。「いわゆるシャンソン」にはどこか共通の感じかあります。田中朗氏のピアノと歌は、しかし違います。独自に崩しつつ、同時に歌に内在するドラマを語り、たとえばオリジナルが3分の歌が10分をはるかに越える長大な傑作に生まれ変わることは、しばしぱです。これは、まがいものではない創造行為に他なりません。
回をかさねて、男っぽい骨太の歌がますます快訓です。「いわゆるシャンソン」を逸脱した声と身振りの表現力には抜群のものがあり.スタイルこそ違いますが、石川功氏と田中朗氏のお二人は.現在のシャンソンの世界の双壁ではないでしょうか。 歌はひとりひとりかちがっていてあたりまえです。あたりまえのことをあたりまえのこととして、石川功氏は一本の剣を磨いてこられました.追いつめ、突きつめ、歌の枠をきびしく保ちつつ、すさまじい人間のドラマを開示されます。すなわち、ブラヴォーです。
後援会発足記念・特別コンサート。加古氏と豊中高校時代の同級の広野敏生氏の友情コンサートでした。場内も豊高出身の方が多く終演後あちらこちらで昔話の花が咲いていたようです。旧友のため、と心を砕かれたあたたかい人です。 加古隆氏は東京芸大で三善晃氏に師事。パリ国立音楽院でメシアン氏に師事、一等賞を得て卒業。当夜はすべて自作。ピアノ組曲「クレー〜いにしえの響き」より、空と波と、組曲「イマージュ」、雪の中、ピアノ組曲「Estampe Sonore」、Landscape TUVが演奏されました。
2度目の来演、熱心なファンの方々に支えられてのステー−ジでした。河野氏はすでに30年以上ツィターとともに歩み、本格的なツィター奏者として日本とヨーロッパで活躍されています。ツィターを各種特注され、現在54台所蔵。またヨーロッパでのツィター曲の楽譜の収集、採譜を続け、そのコレクションは3,000曲をこえています。 この民俗楽器の音色、映画「第三の男亅のあれ、といえば皆さんご存しでしょう。アントン・ガラスが、まずツィターの魅力を世に広めたのでした。当夜の演奏会では「ドナウの四季」「窓辺の花」「恵みの河」など」などが弾かれ、現代のツィターの表現力を縦横に楽しませて頂きました。
2回目の来演。気性のさっぱりした方で、前回の打ち上げに赤提灯にお連れしたときに、鮭茶づけを頬ばりながら「あなた、これおいしいわよ」とお気に召して頂いたことが、いつまでもほんのりと暖かい思い出になっています。 昭和13年の音楽コンクール第1位のピアニストは、今年もお元気に故郷に戻ってこられました。モーツァルトがメインのプログラム。アリエット2曲と歌曲「すみれ亅の常森寿子氏と、ベートーヴェン「魔笛の主題による7つの変奏曲亅河野文昭氏が花を添えて下さいました。ピアノ・ソロはソナタ。K.310、330、331もう、なにもいうことはありません。感じる人は、あの音楽を感じていました。終演後、目を真っ赤に泣きはらして、私に挨拶に来られた方がありました……
兵庫県龍野市生まれ。地元出身の気鋭のピアニストを、じつは開館まもなくの頃の水谷川忠俊氏を通じてお招きしたことがあります。前途有望な若手の演奏者は、その後真摯に研鑽を積まれ、堂々と自分のことばを語る立派な音楽家に成長されました。 シューマン:クライスレリアーナとショパン:バラード全曲。きりりと引き締まったプログラムは、いずれも虚飾のない音楽家が全身を打ち込んでいく気迫に貫かれ、すぐれた技巧、スタインウェイを轟然と響かせる思い切りのよさが、そこかしこで音楽的な感動にまっすぐにつながっていきました。 自主企画でショパンははじめて採りあげました。人を選び、人を得たよろこびで胸が一杯になりました。
いや、すごいヴァイオリンでした。フランクなど、だれよりもすばらしい、と絶賛を贈ります。清潔さと、息をつめた抜群の緊張感と、燃焼の熱さと、そのすべてが高度なエスプリに支えられて…… 近藤圭氏の新作については、解説から引用します。「舞」は大地を祝福し愛着する人々のおどりが儀式化されたもので、「踊」はよりロマンティシズムの流れとなって民衆のなかに根を下し、大地の上て乱舞するパッショネートな民俗舞踊である。 久保洋子作品のみピアノは作曲者が受け持ちました。作品は考えぬかれた不抜の構築力を誇るもの。技巧が磨ぎすまされ、より人間的な味が荊にも増してたちこめていました。久保氏としても、これは時期を画するものとして、記念的な作品となるのではないかと思えます。 なお、演奏者はお二人ともパリ国立高等音楽院卒、現在クロード・ドビュッシー国立音楽院教授です。
芦屋市婦人会々長広瀬忠子さんを中心とした、ご婦人ばかりの講演とお食事の会です。襲名されたばかりの中村雁治郎師や、モーツァルト没後200年のために日下部吉彦氏をお招きされ、いかにも芦屋らしい婦人文化を形成されておられます。
インド舞踊には5000年の歴史があり、世界の舞踊の源であるともいわれています。今回のものは、南インドの寺院から生れた伝統的な祈りの踊りでした。 櫻井暁美氏は、日本人としてはじめて、舞踊科目でインド政府への国費留学生に選ばれた方。現在はギータンジャリ・インド舞踊研究所を主宰されています。 アジアの文化と歴史については、折にふれて今後も催事を進めていきたいと思っています。アジアは分厚く。深く、その大地にはとてつもなく面白いものが、まだ私たちの目にふれずに埋もれています。
江戸・吉原二題。長唄「三曲糸の調」(さんきょくいとのしらべ)常磐津「権八/小紫 廊の仇夢(さとのあだゆめ)」長唄「吉原雀(よしわらすずめ)」が演奏されました。 これも熱のこもった会でした。伝統芸能に、なおこれほどのファンがお集まりになるのです。もともと大阪の旦那衆には邦楽の稽古をたしなむ伝続があり、この日も「この会のために新調しましたんや」と粋な和服をお召しになったお客様がおられました。出演者の気合に、お客の方もそうしたことで応えられている訳です。 助演の方のお名前を列記しておきます。芳村伊十七、今藤尚之、杵屋勝之弥、今藤美治郎、今藤佐志郎、今藤美佐緒、常磐津小欣司、常磐津小欣矢、常磐津文字由喜の諸氏。
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1991年 1月 1日 発行 著 者 山村 雅治 発行者 山村 雅治 発行所 山村サロン
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